以前、かわいい太陽の塔のぬいぐるみを買った記事を投稿したのですが、太陽の塔の作者の岡本太郎についてほとんど知らないなぁ、と思ったので、こちらの本を読んでみました。



この本は、岡本太郎の残した数々の名言と、そのそれぞれの言葉が発せられた背景について詳しく説明している本です。

岡本太郎の仕事論
ページ構成はこんな感じ。
太郎の発言(左ページ)と、その解説が後に続く

ちなみに筆者は、岡本太郎のパートナーの岡本敏子の甥で、生前の太郎についてよく知っているそうです。

さて、本書の中からいくつか印象深かった言葉をご紹介しましょう。

マイナスの道を行く

私は組織が大きらい。いつも孤独の中で仕事をしてきた。周囲からも”受ければ傷だらけになるぞ”と忠告され、万国博協会からの誘いを最後まで渋った。しかしよく考えてみると、だれかが傷つかないと大事業はできない。こういう場合私は逃げない。進んで傷つくのが私の哲学だ。

岡本太郎の生き方を見ていくと、マイナスの道を行くこと、退路を断つこと、危険な方、困難な道を積極的に選ぶことが通底しているように感じられます。
例えば彼は、万博では「太陽の塔」を製作することで、「人類の進歩と調和」という万博テーマに真っ向から挑みますし、フランスでは前衛芸術界のトップクラスとして迎えられたにも関わらず、そこでの地位を捨てて全く別の民俗学の研究に取り組むようになるのです。

しかし、それは彼が強い人間だったから、ではないそうです。
太郎は批判や嘲笑されても、転んでも、倒れても、痛くて泣いても、志を変えずにまっすぐ歩くことが生きる筋だと考えていたのです。

逆境に折れないこと、凹まないことが強さだと思いがちですが、そうでなく、弱くても、泣きながら、傷つきながらでも自分の道を進んでいけばいい。
そう思うと、なんだか勇気が出てきます。

見返りを求めない

芸術は太陽と同じだ。太陽は熱も光も、無限に与える。ひなたぼっこしても、「おい、あったかかったろう。じゃ、いくら寄越せ」なんて、手を差し出したりしないだろ?
この思想に基づき、岡本太郎の作品にはパブリックアートが多いそうです。
東京にあるもので有名なものとして、渋谷駅の巨大壁画や、青山のこどもの城にある「こどもの樹」などがありますね。

彼は、人に認められるとか、売れるとかいうことは「自分ひとりで宇宙にひらけばいい」と語ります。
「もっと評価されたい」「売れたい」という思いを持ち、でもなかなか叶わなくていじけたり、卑屈になったり、しょんぼりしたりしている自分としては、これはどきっとする言葉でした。

誤解、けっこう

誤解ーーおおいにけっこうじゃあないか。いったい、理解したといっても、自分の持っているカードと相手のカードが合って、なっとくしただけじゃあないか。なかなか理解できないところから、おれはいったい何だろうーーと考え込む。それが、人間の血となり肉となる。
自分は人にどう見られたいのかではなく、自分は何をやりたいのかを大事にするという思想を持ち、やったことが自分になる、と彼は考えていました。

上の二つの引用文ともリンクしますが、人にどう見られるか、どう思われるかというところを太郎は意に介しません。
自分の人生の中で何を大事にしたいかという筋が明確にあり、その筋を通すためなら、自分は多少傷ついてもかまわないと考えていたのかなと思います。

たとえて言うなら、自転車(=自分自身)で、ある目的地まで行こう(=人生の中の目標を達成しよう、筋を通そう)として、雨ざらしになってさびたり、誰かにぶつけられて荷台がちょっと凹んだりしても(=困難に直面したり、人に批判を受けても)、「あぁ~自転車が傷ついた…」と立ち止まってしまうのでなく、「ちょっとくらい傷ついても、自分はこの道を行くんだ」と前に進み続ける、そういう感じなのかなと思いました。

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読んでいく中で、岡本太郎の生き方、めちゃくちゃかっこいいな…!と何度も心が震えました。彼の生き方は本当に人生のお手本にしたいです。

我が道を行くクリエイター、アーティスト気質の方にぜひおすすめしたい一冊です。