昨日、ARのUI/UXデザインを学ぶ AR DESIGNER MEETUPに参加してきたので、内容を詳しくご紹介したいと思います。


概要

ARプロダクトのUI/UXに関わっている、またはこれから関わっていきたいデザイナー向けの会でした。AR×切り絵の表現をするにあたって、なにかヒントを得られるのでは、と思い参加を決めました。

内容

1. ARアプリのデザイナーが語るARのUI/UX 

ARアプリのUI/UXを担当した4名のデザイナーさんが、設計やデザインの工夫や、そこから得られた気づきについてお話されるセッションでした。

Graffity UI/UXデザイナー 樋山さん
複数のARアプリのデザイン経験から得た気づきをお話されていました。


樋山さんは、ARアプリのデザインにあたり、ロサンゼルスまで実際に足を運んで学生に密着取材したり、大学に行ってヒアリングを重ねたりと、実際に使ってもらってユーザーの声を重視したデザインをされているという印象でした。
一人で開発していると、どうしても視野が狭くなってしまうので、誰かに触ってもらってフィードバックを得ながら開発するのは大事だなと思いました。


meleap プランナー/ディレクター 井上さん
Hololensというヘッドマウントディスプレイを使って、カートを運転しながら、拾った火の玉を打ってゴーストを倒すHADO KARTというバトルゲームを開発される中で、困ったことととその解決法についてお話されていました。

チームカラーをなかなかわかってもらえないため、自分のチームカラー以外のアイテムが見えないように調整したり、火の玉がヒットしたかわかりやすいよう音で知らせたりした経験から、「見た目をよくすること、変えることだけがデザインではない」と気づいたそうです。


ARを障り慣れない人にとっては特に、入ってくる情報量が多すぎて見落とし、見逃しが増えやすくなるのかな、と思いました。 ゲームに限らず、ARアプリを開発するにあたり、どうしたら情報を受け取りやすくなるか、わかりやすく操作してもらえるかを考えるヒントになりました。


ヤフー株式会社 UI/UXデザイナー 廣橋さん
廣橋さんは、Yahoo MAPアプリのARモード(スマホカメラに写る実際の風景に、矢印や看板などを重ねてルート案内してくれる)のデザインをされたことからの学びをお話されていました。


MAPアプリということで、歩きスマホで事故が起こらないよう、起動時や暗い夜道でアラートを出す、という細やかな配慮がされているのが印象的でした。

ARに慣れない人が想定外の使い方をする可能性は高いでしょう。その時に、「あーわかんない」と諦められてしまえば、せっかく面白いもの、便利な機能を開発したとしても、使ってもらえません。さらに、その後もARは難しいものだと嫌煙されてしまうかもしれません。
以前展示したAR切り絵時計は、ブラウザによっては見られないことがあり、キャプションで注意書きをつけていました。しかし、そういう形では気づいてもらえず、「なんだ使えない」と諦められた方もいたかと思います。
アプリの中で自然に軌道修正できるように実装しておくことが大切だと気付きました。


BB Media デザイナー 角井さん&テクニカルディレクター 木戸さん
「魔法の手鏡」というARゲームの開発経験をもとに、「魔法の作り方」というタイトルでお話されていました。


手鏡型のケースに入ったスマホの中で、妖精と一緒に宝石を探していくゲームです(懇親会で遊ばせていただいたのですが、めちゃくちゃ楽しかったです)。


SF作家のアーサー・C・クラークは、「十分に発達した技術は、魔法と見分けがつかない」と述べています。その言葉を受け、「魔法を作る」ため、ゲームの開発の中でiPhone自体を見せないようにし、ボタンなどのスマ―トフォン的なUIは隠すようにしたそうです。

私自身、魔女になりたい(笑)という思いから、AR切り絵の実装を試していたので、今回のお話はすごく勉強になりました。
特に、スマホ自体をケースの中に隠して見えなくすることで、より魔法感を高めるという発想が衝撃でした。
手鏡モチーフの中にスマホを隠したり、ハーフミラーを入れてよりいっそう鏡っぽくしていたり、工夫の細かさが素晴らしいと思いました。
いずれAR切り絵展示会をできたらいいな、と考えているので、その際、この必殺スマホ隠しのアイデアはぜひ取り入れてみたいと思います。


2. 真に価値あるARアプリを作るためのフレームワーク紹介

MESON CEO 梶谷さんから、UI/UX設計の手法のお話がありました。

「意義と意味のデザイン」という言葉を出しながら、
サービス自体の価値をどうデザインするか=意義のデザインをまず行い、それからARである必要性をどうデザインするか=意味のデザインをしていくことが大事、とのことでした。


意義のデザインの段階ではまず、ARを一旦忘れて、本質的にユーザ価値のあるサービスを考えることが大事なのだそうです。
そのためには、ユーザーインタビューやクライアントインタビューを通して問いを明確にする、例えば「切り絵に付与するAR表現を考える」という大きなテーマを、「どうすれば切り絵を、壁に飾って楽しむだけでなく、普段使いしてもらえるだろうか?」「どうすれば切り絵を、ただ一人で見て楽しむだけでなく、みんなでわいわい楽しみながら見てもらえるものにできるだろうか?」など、具体化するんですね。

こうして解くべき問いが定義出来たら、アイデア出しに移ります。
今回は一例として、アナロジーによるアイデア出しが紹介されていました。
これは要するに高度なパクリということで、問いを抽象化し、構造的に似ている部分はどこだろう?と考えて、そのエッセンスを活かしてアイデア出しをしていくというものです。
上記の例でいえば、「どうすれば切り絵を、壁に飾って楽しむだけでなく、普段使いしてもらえるだろうか?」という問いの構造は「Aを美術品・嗜好品としても、日用雑貨・生活用品としても利用する」と言えるでしょうか。そこから構造的に似ている者は、例えばガリレオ温度計(ガラスの球体がぷかぷか浮かんでインテリアとしても美しいし、現在の気温もわかる)とか、ペンダント型のかっこいい防災ホイッスルとかがあげられるかもしれません。そこからそのアイデアを切り絵に転用できないか?と考えるわけですね。

この手法を使えば、新規性の高いアイデアを大量に生み出せますし、解くべき問いにきちんと答えるサービスアイデアになりやすいのです。

こうして意義のデザインが出来たら、ARである必要性を考える意味のデザインをしていきます。セッションの中では、ARの価値として、以下の6つが紹介されていました。

・O/Oの超越
現実世界(オフライン)にオンライン情報を重ねて、オンライン・オフライン間の情報断絶を埋めること。上記のARの道案内などはそうですね。

・知覚の拡張
人間の知覚ではとらえきれない外界の情報をとらえられるようにすること。
 ゴルフ場で、どちらに向けてどの角度で玉を打てばよいかサポートしてくれる機能などです。
・想像力の拡張
自分の想像をARで見せてくれるもの。
ネイルや服、眼鏡などを、実際に試さなくてもAR上で身に着けたらどうなるかを確認できるようなサービスです。

・物語の拡張
オブジェクトが持つ物語を拡張してくれるもの。例えば、絵画にかざすと、その物語をARで表示してくれるなど。私がAR切り絵でやろうとしているのは、まさにこのことかもしれません。

・次元の拡張
ポケモンGOのように、二次元キャラを三次元に登場させるもの。
推しが三次元に現れたら幸せですよね。

・距離の超越
遠距離にいる人が同じ空間にいるように感じられるようなもの。
SpatialというAR版Skypeのようなサービスがあるそうです。

意義のデザインであれこれ浮かんだサービスをARで提供する時、このARの価値を体現しているか?を考えてしぼりこんでいくことが大事だとのことでした。

ARアプリの開発のエッセンスをぎゅっと詰め込んだセッションで、大変勉強になりました。

3. パネルディスカッション

最初に登壇された方たちのパネルディスカッションがありました。


ARが有用だと思われるケースは何か、ARコンテンツのアイデアを出す時のコツはどんなものか、など、ARアプリをデザインするにあたって疑問に思うことに回答されていました。

ディスカッションの中では、映画やゲームからARのヒントを得ているというお話や、世の中に昔からあるものを、テクノロジーでどう面白くするかが大事だというお話が繰り返し出ているのが印象深かったです。

まだまだARは魔法っぽい驚き体験という印象が強いように思います。
ですので、その驚きやワクワク感を楽しみながら使えるようなコンテンツを生み出していきたいなと思いました。


まとめ

大変刺激的なMEETUPでした。本当に参加できてよかったです。
切り絵とARを組み合わせて面白いものを作っていきたいな…!と改めて思いました。
頑張ります!