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気付くと、目の前一面が真っ赤だった。
「それは壁だよ」
どこかからか声がした。
何歩か下がって見てみると、果たしてその赤いものは巨大な壁だった。
真っ赤な壁に、白いペンキでこれまた巨大な目のアイコンが描かれている。
私が見ていたのは、その瞳孔にあたる部分だったのだ。
「目を近づけ過ぎているとさ、よくわかんないよね。視界いっぱいに広がってるから。でもその赤いのは壁だったってもうわかったでしょ」
声は続ける。
「同じ事で、目を近づけ過ぎているから、いまの我々に見えるのは三次元世界なんだよ」
楽しげな声を聞きながら、私は考える。
(もう何歩か遠くから、現実世界を見つめる事ができたのだとしたら)