今日は、図書館で百鬼夜行絵巻に関する先行研究をいろいろ調べました。
その中で、絵巻に描かれている図像の意味がだんだん詳しくわかってきて、すごくワクワクしていたんですよね。
ということで、今日は皆様を百鬼夜行の世界へご案内したいと思います。



百鬼夜行絵巻のゆるーい解説

百鬼夜行絵巻は、今回は東大所蔵のものを使っていますが、これ以外にも真珠庵という京都の寺院に所蔵されているもの(これが百鬼夜行として一番有名なもの)、国際日本文化研究センター所蔵のもの、国立博物館所蔵のもの、海外の美術館に所蔵されているもの...などなど、いろいろなバージョンがあるんですね。

その中で描かれる妖怪のバリエーションには、実は何種類か系統があります。
東大所蔵のものは、主に真珠庵所蔵の絵巻と京都市立芸術大学芸術資料館所蔵の絵巻の妖怪のラインナップを組み合わせたもので、そこに江戸時代に有名になった妖怪を織り込んで描かれたと考えられています(小松, 2008)。

ですので、複数の絵巻に描かれた類似の妖怪を見比べながら、デザインの違いや描かれ方の違いを学んだり、その妖怪について知ったりすることができるんですね。
ということで、これまで切ったもののいくつかを取り上げて解説してみましょう。


例えば、以下の2枚の切り絵。
これは田楽を楽しむ姿だそうです。
田楽というのは、田植えなどの農耕の際に歌ったり舞い踊ったりすることから始まった、平安時代にルーツのある芸能です。
ちなみにあの味噌をつけて食べるおいしい田楽は、田楽の舞の中で一本足の竹に乗る動きと形が似ていることから名前がついたようです(参考: 田楽)。

百鬼夜行図の切り絵

百鬼夜行図の切り絵



そしてこれは、通知表をもらって驚愕している...のではなく(絶対そうだと思ったのに笑)、経文を読み上げているところなのだそうです。この前後にいる妖怪が、仏教用具を身につけている流れからそのように読み取れるようです。
ちなみに、こいつは狸でなく猫だと書いてありました。これも予想外。

百鬼夜行図の切り絵



あと、この後ろにいるのは納豆じゃなくて草鞋の妖怪らしいです(これも納豆だと確信してたのに)笑
紺の衣を着ている人の右腕からはみ出している...と思われたこの棒は、別の絵巻と引き合わせてみると、実は草鞋妖怪の乗り物(オレンジの馬)とひと繋がりと分かりました。ということで、茶色の紙を貼ってしまったのですが、オレンジ色の紙を貼り直す必要がありますね。
ちなみにこの馬は、鹿杖(「かせづえ」と読む、先が二股になっている杖)の妖怪のようです。
百鬼夜行図の切り絵


こうして深く知っていくと、より鑑賞を楽しめますよね。
私自身も、切り進めていくのがますます楽しみになりました!



更に詳しく百鬼夜行を学びたい人へ

詳しく知りたい方におすすめの本を何冊か貼っておきました。
今回のブログ記事の参考文献でもあります。

特に、1冊目の小松先生の本は、百鬼夜行絵巻の従来の研究史を大きく覆す本で、ミステリーを読む感覚で絵巻の系譜を辿ることができる、とても面白い本でした。
カラーの絵もたくさん入っていて、おすすめです。
興味のある方はぜひ読んでみてください!