ここまでのあらすじ

ルーン占いを学び始めたが、既存の占術に疑問が湧いたので、オレオレ流ルーン占いをしていこうと思った。



ルーン文字について真面目に調査してみた


さて。

ルーンの正位置=ルーン各文字が持っている意味を理解して、そこから読み解いていく、というやり方で占いを進めてみよう、と思いました。


しかし、買った解説書をよく見ると、各文字の意味を解説しているようで、著者が勝手に独自解釈を含めてる部分があったのですね。

これって、原典に当たる必要あるんじゃない...?

と、研究魂に火がついたので、そもそもルーン文字に付与されている意味について調べていくことにしました。




調べていくと、ルーン文字に割り当てられている意味は、ルーン詩なるものに書かれている、ということがわかりました。

ルーン詩は、ルーン文字の意味や象徴性を記した詩の形式で、当時の人が、ルーン文字の名前・意味・象徴性などを学ぶ助けになったものです。これは、識字率が低い時代に口頭伝承を補完するためでもあったようです。


以下の3つが最も有名なルーン詩の資料です。
それぞれ異なる地域と時代に由来していて、ルーン文字の解釈にも若干の違いが見られます。

・9世紀頃に書かれたアングロサクソンのルーン詩

・13世紀頃に書かれたノルウェーのルーン詩

・15世紀に書かれたアイスランドのルーン詩 


読み比べてみると、そもそも採用されている文字数が違ったり(アングロサクソン詩では33文字、他は16文字)、共通の文字が使われていても、割り当てられたシンボルが違う場合もあります(ᚢという文字は、アングロサクソン詩でŪr=オーロックスという牛の種類、ノルウェー詩でÚr=金属中の不純物、アイスランド詩でÚr=雨)。

アングロサクソン詩では、その土地にキリスト教が普及していたことから、詩に宗教的要素や道徳的教訓が含まれる一方で、ノルウェー詩やアイスランド詩は、北欧神話や自然崇拝の影響が色濃く反映されていることが多いようです。


つまり、これらのシンボルを解釈するためには、当時の時代背景とか歴史的・文化的状況も理解した上で読む必要がありそうなのですよね。


例えば、アングロサクソンの世界で、オーロックスは人々にとってどんな存在だったのだろう?というのを考えてみましょう。

ざっくりWikipediaで調べたら、こんな一文を見つけました。

Aurochs were hunted with arrows, nets and hunting dogs, and its hair on the forehead was cut from the living animal; belts were made out of this hair and believed to increase the fertility of women. When the aurochs was slaughtered, the os cordis was extracted from the heart; this bone contributed to the mystique and magical powers that were attributed to it. 

生きたまま切り取られたオーロックスの額の毛で作られたベルトが、女性の生殖能力を高めると信じられていたり、心臓から取り出された骨が魔術的な力を持っているとみなされていたりした。

...つまり、オーロックスはただの牛じゃなく、何かしら特別な力を秘めた存在と認識されていたのではないか、と考えられるわけです。

「生きたまま毛を切り取る」「心臓から取り出す」「生殖能力」あたりのキーワードから、生命力の強さへの崇敬が伺えます。
他にも、この地域で狩りにあたって類似の儀式がなされていないか?とか、この地域・時代の文学でオーロックスがどのように描かれているか?などを比較してみるのが良さそう。

(今、ぱぱっと適当にWikipedia使っちゃったのですが、もっと厳密に信頼度の高い参考文献を引いてくるのが正しいやり方ではあります)


こんな感じで考えていくと、ルーン文字の持つ意味をひとつずつ調べていくのって、結構果てしない作業だな...と気付きました。学生時代の研究を思い出しますね。



ルーン占いへの懐疑


そもそものルーン占いの起源をさらに調べると、歴史的信憑性がそこまで高くないことに気づいたのです。


もともとルーン詩が、文字教育の目的を果たしていたのは間違いないようですが、そこで使われているシンボルの解釈が、後世になってオカルト的解釈をされ、占いと結びついていった、という流れにあるようです。

ルーン文字が古くから使われていたことには間違いないのですが、出土した古代のルーン文字の中で、占い用に使われていたと直接示すものはほとんどないようなのです。

現在普及しているルーン占いの多くは、20世紀初頭のオカルティズム運動や、北欧神話ブームの影響を受けていて、学術的な裏付けがないままに広まっているものが多いらしい。なんと......


これ、たとえるなら

・昔々あるところに、「ドはドーナツのド、レはレモンのレ」って詩があった。

・その当時、ドレミ...は宗教的・呪術的なシンボルではなく、ただの一つの文化的な側面だった。

・後世になって、オカルトが大流行。ドレミが再発見され、神秘性が付与されて、ドはドーナツ、レはレモンを意味するドレミ占いが成立して、まことしやかに広まった。

・英語版だと、ドレミの歌の歌詞は、"Doe, a deer, a female deer. Ray, a drop of golden sun. "なので、ドは雌鹿、レは光線を意味するという形で、違うシンボルが使われている。だから、占いによってはそのシンボルを採用することもあったりなかったり。

・でも、そもそも古代にドレミ占いなんてものがあった事実はない。

みたいな状態なのかな?と考えています。



どう占っていくか


ルーン占いって、てっきりルーン文字と同じくらいの歴史と正統性があるものだと思い込んでいたので、ここまで調査を進めてみて、思ったよりもバックボーンがあやふやなものなのだな、と大きな衝撃を受けていました。

私としては、歴史の重みこそが、ルーン占いというものを信じる拠り所の一つたりうる、と思っていたので、それがサラサラ...と消えてしまった状態で、一体どう向き合って占っていけばいいんだろう、という気持ちが湧いてきていました。


うーん。納得できるルーン占いが存在しないのだとしたら...

自分で作るしかないよな。ないものは作る。お前はいつだってそうだ。


そんなわけで、影織式ルーン占術をのんびり編み出していこうかな、という気持ちが湧いてきているところです。

ざっくり方針としては、ルーン詩を読みながら、各ルーン文字の解釈を深めていくことになるのかな。

一体何を始めようとしているんだろうね...(๑╹ω╹๑ )



課題図書

まずはこれ。原詩の注釈が英語でついています。
Runic and heroic poems of the old Teutonic peoples : Dickins, Bruce, b. 1889 : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive

Runic and heroic poems of the old Teutonic peoples : Dickins, Bruce, b. 1889 : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive

Bibliography of the Runic poems: p. 9-11 ; Bibliography of the heroic poems (Waldhere, the Finn fragment, Deor, Hildebrand): p. [50]-55 ; General...




余裕があればこれも読んでみようかなと思ってます。アングロサクソン系ルーン詩についてのきちんとした学術書です。
一人だと挫折しないかな...誰か一緒に勉強会しませんか?笑