ブラックエンジンとホワイトエンジン

創作や表現活動をするために自分を動かす動力には、ブラックエンジンホワイトエンジンの二種類がある、と思います。


ブラックエンジンを動かすのは、怒りとか恨みとか悲しみ、つまりネガティブな感情

ホワイトエンジンは楽しさとかワクワクとか好奇心、つまりポジティブな感情


ブラックエンジンを動かす時、

・有名になってあいつを見返してやろう
・差別化し、自分の存在価値を高めよう
・お金を稼ごう
・あの人に認めてもらおう

...など、自分を満たすために創作しよう、とします。

ホワイトエンジンを動かす時、

・楽しそう
・好奇心が湧いてきた
・ワクワクする

...など、自分が満たされているから創作しよう、とします。


ブラックエンジンって、ホワイトエンジンに比べると明らかに爆発的な威力が出ます
「なにくそ!負けるもんか!この恨みや痛みを前進する力に変えてやる!」みたいな怒りのエネルギーってめちゃくちゃ強いので。
ただ、強いけれども瞬発的なものでもあるんです。抱え続けるにはあまりにしんどい。

一方のホワイトエンジンは、急進的な威力はないのですが、コトコトと穏やかに燃え続けるので、長期的に燃やして進み続けることができます


もちろんブラック・ホワイトの割合が0%/100%にぱっきりとは分かれるとはいえないのですが、基本的にはこのブラックとホワイトは共存しにくいです。
創作が手段か目的かという部分と、動機が根本的に違うので。



エンジンの切り替えが必要になる時


ブラックエンジンで進んでいくと、燃料となるネガティブな感情がある程度昇華されていきます。
そのタイミングで、ネガティブな動機で前進することに違和感が出て、創作ができなくなっていくことがあります。

ここからは、ホワイトエンジンへの切り替え作業が必要になってくるのです。

※人によってはそれが耐え難くて、わざわざブラック燃料を見つけに行く...つまり、困難や苦難に無意識に飛び込んでしまう人もいます(ひょえ)。


エンジン切り替え作業に本格的に入ることになる時って、創作だけに限らず、結構生き方の根深いところにまで影響してきます

まぁそうですよね。創作って、自分の一部を切り出してくる作業ですし。
卵が先か、鶏が先かという話ではありますが、創作と人生は決して無関係ではいられません。


この時、「今までのようには作れない」という悩みにぶち当たります。

それまで、何かネガティブな気持ちに突き上げられるように作っていたのが、止まってしまう。かと言って新しいインスピレーションが湧いてくるわけでもない。
そのため、自分が何もできない、すごく無力な存在になったような不安感を覚えるのですよね。
さながら、「魔女の宅急便」でキキが飛べなくなってしまった時の心境に近いかも。



エンジンを切り替え、次の創作ステージへ進むために


どうしたらいいのか?

とりあえず、まずは立ち止まることです。

作りたいものが思い浮かばなくても、無理に捻り出そうとしないこと。


実はうまく動けない流れこそ、順調なのですよね。
一時的に弱体化したように見えるけれど、ブラックエンジンをOFFにして、新しいルートを模索しているからこそ、今まで通りの創作ができていないだけ。

たとえるなら、RPGの転職でレベル1に戻ったようなものです。
かつて使っていた動力が使えなくなり、一時的に弱くはなっているのですが、決してゼロからではなく、過去の引き継いだ知識をもって再スタートできます。
いずれホワイトエンジン搭載の新しい状態に慣れていけば、前より楽に、そしてかつては冒険できなかった場所にまでいけるようになるのです




更にここからどうエンジンの切り替えを進めていくか?

自分の中の楽しさやワクワク、好奇心を拾い上げていくことです。


ここで大事なのは、創作を継続することにこだわらないことだと思います。

新しい創作のモチベを模索するのもいいのですが、そうでない部分、たとえば対人関係や生活や仕事などのあらゆる場面で、自分にとっての純度高い喜びを探していくのがおすすめ。

人生の中の様々な場面で、自分の中の「好き」「楽しい」といったポジティブな気持ちをより精度高く拾い上げられるようになっていくことが、次のステージを切り開いてくれるのです

その過程で、創作における楽しさもまた、自然と拾い上げやすくなっていくのですね。


ホワイトエンジンを搭載し直すことで、創作のやり方・向き合い方・スタンスはこれまでの形とは変わってくるはずです。

この時、「創作自体から離れる」という選択をすることになるかもしれません。
ネガティブを脱するところまで連れてきてくれたものとして、ここで創作活動に区切りをつけてもいい

あるいは、自分の人生にポジティブな光を与えてくれるものとして、創作と改めて向き合いたいと思ったら、新たなチャレンジを始めることもあるかもしれません。


どちらを選ぶにしろ、新たなステージの始まりです。



影織の体験

最後に、私の体験をまとめておきましょう。

私自身、もともとブラックエンジン駆動開発からスタートを切った身です。どろどろなブラックモチベーションをガッツリ持った状態で創作が始まりました。


それからしばらくして。

ある日、それまでの「苦しみをバネにする」という創作スタイルに、突如疑問が湧いたのです。
...というのが多分、ちょうどこのあたりの時期。もう5年前かぁ〜

欠乏感を満たすための創作は終わりだ。

欠乏感を満たすための創作は終わりだ。

欠乏感を満たす創作の終わった、と感じたという日記です。


この記事を書く少し前に、インタビューを受けました。
そこで自分の創作動機について聞かれた時に、「どうして人生にはこんな悲しく辛いことがあるんだろうという、モヤモヤをテーマに物語を作っています」と話したのですが、それを口にしながら、めちゃめちゃ強烈な違和感を感じたんですよね。この気持ち悪さ、今でもよく覚えています。

「あれ???確かにこれまではそうやって作ってたけど...これからも、そんな風にネガティブな気持ちを昇華させるためだけに作っていきたいの??ほんとに???」と。

そこからちょっとずつ「じゃあ、一体どんなモチベで、何を創作したいんだろう?」という模索が始まったのです。


正直、ここからの切り替え作業がまぁしんどかったです。
多分、エンジンがしっかり切り替わるまでに、上記の記事を書いてから数年かかったのではないかな。
時間をかけて、自分にとっての喜びや楽しさって何だろう?と追求していきつつ、残っていたブラックエンジンを手放していった結果、今に至ります。


欠乏感ベースでは動けないとわかったとはいえ、創作することがアイデンティティだと強く認識していたので、思うように創作できないことに対し、強い不安や恐怖を感じていたのです。

「どうにかして創作を続けねば」というこだわり(執着とも言うかな)を持ちながら、創作を一生懸命頑張っていたな...と思います。もちろん、それはそれでいっぱい楽しく、刺激的ではあったけれどもね。


あの頃の自分に言えることがあるとしたら。
「創作してもしなくても、影織は影織として楽しく生きてて大丈夫だよ
と言ってあげたい。


現在おそらく、エンジンの切り替えはほぼほぼ完了していると思います。そしてご覧の通り、切り絵やAR、ブログや歌など、様々な形を取りつつ、創作を続けています。
創作している自分も、していない自分も、どっちであってもOK...だけどやっぱり、創作しているのがなんだかんだ私らしいよな。という気持ちで生きてます。


あの頃、創作することにこだわりすぎなくても、もっと広く、楽しさやワクワクや好奇心を追い求めることへの抵抗が少なければ、このエンジン切り替えはよりスムーズだったかもしれません。

でも、そうして苦しんだからこそ、こうしてブログに書けるのかな、とも思うのです。




まとめ

ブラックエンジンからホワイトエンジンへの変化って、野球とサッカーくらいルールが違うので、戸惑いが大きいもの。
この記事が、上手な切り替えの一助になったらいいなぁと思います。

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