何事も、学習し始めてから上達するまでの、成長のスピードは一定ではありません。
ごく最初期はぐんぐん理解が進んでできるようになっても、ある一定ラインを超えた時に、伸びが鈍化することがありますし、目に見える形では上達を実感しにくくなったりするものです。
いわゆるスランプというやつ。
では、スランプに突入した!と感じて焦る時、どう過ごしたらいいんだろう?
スランプと付き合っていく
スランプとは何なのか
筆者は、同一作業を繰り返すことで、それにかかる時間がどのように変化していくか、という実験の結果を示しながら、「スランプ」について以下のように説明しています。
鍵となるのは冗長性と揺らぎなのだ。つまりある一つの行為を行う際に、その実行方法が複数あり、それらが場面場面で異なる仕方で現れるのである。その結果、実行に要する時間に変動が生じているのだ。プラトー期では、それまでにある部分の組み立てでもっぱら使われていた接続方法Xとは別のものYが現れてくる。つまり複数の操作方法が拮抗、多様なリソースが存在する冗長な状態なのである。そして後退期になると新しい方法Yが主に使われるようになる。この新しい操作方法Yの利用によって後退が起きてしまうのだが、ある時期にブレークスルーが生じ、タイムが大幅に短縮されるのだ。
具体的に、ボイトレに例えてみましょう。
最初、Xという喉のパーツを使ってビブラートをかけようとしていたけれど、新しくYという別の喉のパーツを使うやり方を覚えたとします。
すると、ビブラートをかける上で、2つのパーツを操作するルートが存在することになります。
しばらくこの共存期間があって、次第にYを使うやり方に習熟していくと、ブレークスルーが起きて、スランプを抜け出すのです。
より優れたYのパーツを使ったやり方を覚えれば、その段階ですぐにブレイクスルーしそうなものですが、そうはならないのです。
これについて、筆者は以下のように説明しています。
これまで操作方法Xをもっぱら用いていたのだが、どういう理由かはわからないが別のYが時々用いられるようになる。Yの方がXよりもうまくできる可能性は高いのだが、前後の操作はXを前提としたものとなっており、それがうまく働くように最適化されている。そこに突然Yが現れても、それを実行するための事前の環境がうまく準備されていないし、その後の操作にうまく繫がるかどうかもわからない。よってYは稀にうまく働くことはあっても、多くの場合不適合を起こしてしまうのだ。
つまり、新しく良いやり方を手に入れても、これまでうまくいっていたやり方に馴染ませるまでに時間を要するので、その調整のために一時的にパフォーマンスが落ちてしまうのですね。
この話に基づいて考えると、スランプは決してダメなものというわけではなく、次の成長のための準備をしている段階だと考えられます。
スランプをどう超えたらいいかを考えてみる
一つには、「このスランプは、新しいやり方に習熟するまでの調整期間なのだ」と考えて、淡々と続けることではないかと思います。
スランプに陥ると、うまくできないことに焦ったり、一生このままだったらどうしよう...と不安を感じることがあるかもしれません。
が、ここまで書いてきたように、次のステップアップがこの先に控えているのだと思えば、そうしたネガティブな思いに引きずられにくくなるのかなと思います。
あとは、淡々と続けることが難しいなら、あえて少し離れてみるのもいいのかな、とも感じます。
スランプをどうにか越えようと、焦って練習するほどドツボにはまって苦しくなったり、無理な練習を重ねて、体や心を傷めてしまう、ということはしばしばあるものです(私も何度かやりました)。
一旦距離を置くことで、フラットな気持ちで再度取り組みやすくなるものです。
いずれにせよ、スランプに陥った時に、もうすぐ次のステップアップが待っているのだな、と気楽に構えて過ごすのがいいのではないかと思います。
まとめ
スランプが「次の飛躍のための準備段階」というのが、根性論ではなく、科学的に示されていてとても興味深いものでした。
ちなみにこちらの本は、さまざまな「学び」についての捉え方について描かれています。
何かを理解したり習得したりするとはどういうメカニズムなのかがわかりやすく書かれていて、とてもおすすめです。
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