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戻って、行って、取ってこい

7月21日、ガーナのウィネバ教育大学で、美術教育を学ぶ学生さん約45名に向けて、Zoomで講演とワークショップをしてきました。

タイトルスライド


Zoom講演とワークショップ


ガーナのウィネバ教育大学

ガーナのウィネバ教育大学

ガーナのウィネバ教育大学

登壇について

登壇のきっかけは、この大学のAbraham先生との出会いでした。
先生はSankofa(サンコファ)というガーナの考え方を、美術教育に取り入れています。

Sankofaは、ガーナのアカン文化に伝わるシンボルで、一羽の鳥の姿で表されます。足は前向き、頭は後ろ向き、くちばしには卵をくわえてます。
Sankofa はアカン語で、3つの語からできています。san(戻る)+ ko(行く)+ fa(取る・掬い上げる)。直訳すると「戻って、行って、取ってこい」。
忘れたものを取りに戻ることは、恥ではない」というアカン族に伝わることわざを、シンボル化したのだそうです。いい言葉だよね〜〜〜。

Sankofa
切り絵のSankofa作った。


この考え方を、Abraham先生は、Return(振り返る)、Retrieve(取り戻す)、Rise(新しく立ち上がる)という3段階のステップとして、学生たちに教えています。
ガーナの美術教育には、植民地時代の影響で、西洋の知識ベースの「絵とはこういうもの」という前提が今も残っています。まずそれに気づき(Return)、自分たちの文化にもともとあったけれど、抑圧されてしまった図像や素材を取り戻して(Retrieve)、そこから新しい表現を生み出す(Rise)のが大事だ、と述べています。

プレゼン前半は、Sankofaをテーマに自分の創作を振り返りつつ、後半では、自分の制作の具体的なプロセスや過去作品を紹介しました。
そして、プレゼン後には、Sankofaをテーマに、小さなワークショップをしました。

さて、今回の記事では特に、プレゼン前半部分のSankofaのアイデアと、ワークショップについてお話したいと思います。


Sankofaから読み解く、私の創作

Sankofaの思想は、「常識とされる前提の中で大切なものを見失っていたことに気づき、取り戻し、そこから新しいものを生み出す」という流れですよね。

これって、植民地の文化的抑圧の文脈で語られているけど、自分の人生というサイズ感の中でも起きていたのではないか?と思ったのです。


たとえば。
私は長いこと、「作品は評価を集めるためのツール」という想定の中で創作していました。なので、切り絵が完成したらSNSに投稿しては、そのままスッ...と引き出しへしまい込んでいたのです。でもある日、友人の指摘で、自分の部屋に自分の切り絵を一枚も飾っていないことに気づいて、大泣きするほどショックだったんですよね。

そこから少しずつ、「自分の価値を証明するためじゃなくって、ただ作りたいから作る」を取り戻していったのです。今では、お部屋の各所に切り絵を飾るようになりました。

つまり、他人ウケするものを作るという前提をReturnして、切り絵が好きという気持ちをRetrieveして、おうちギャラリーがRiseした。


またAR切り絵というスタイルも、このSankofaの概念を通して生まれてきていたことに気づきました。
むかしむかし、個展を開いた時、見知らぬおじさんがやってきました。で、私のAR切り絵を見て突然、「これはアートじゃない」とお説教が始まったのです。曰く、伝統的な表現ではないものは芸術とは呼べないとのこと。うるせぇ!!!笑 
また別の機会に、「切り絵があるのに、わざわざスキャンしてデジタル化して、もう一往復作品を作り直すのって、なんかユニークだよね〜」と、(多分これは悪意のない文脈で)言われたこともありました。
そこにはもしかして「アナログ作品はアナログのまま完結すべき」という、誰が決めたわけでもない前提があるのでは?
ARに極振りしたければ、別にデジタル絵でもいいじゃない、と考えたことも何度もあったのですが、結局やっぱり私には紙と対話して、紙を切ることが大事、という結論に至ったのです。そうしてたどり着いた答えが、紙は紙のまま、その上にARを重ねるという今のスタイルでした。アナログデジタルどっちかを選ぶのでなく、どっちも選ぶ!と決めたのです。

これもまた、アナログ作品はアナログのままある方がいいという前提をReturnして、紙を切る喜びをRetrieveして、AR切り絵がRiseした、と言えるのかな、と思うのです。


自分を息苦しくさせる前提は無意識に刷り込まれていて、疑うことでしか気づけない。
その前提ではない別のルートを選ぶとしたら、じゃあ、何を大切にしたいんだろう?と自分に問い直す。
その上で、自分にとっての幸せを再発見し、再定義してそれを生きる。

これって、ノート術でやってることじゃん!!!!!!(大発見)
と言う事で、プレゼン準備をしながら、まさに自分が人生の中で伝えたいことを、このフレームワークに沿ってお話させてもらえると気づいて、めちゃくちゃ嬉しかったのです。


そして、Riseのフェーズで生み出したものが、次の「こうすべき」「これこそが正解」にならないようにした方がいい、というお話もしました。
そうしたらまた結局、新たな前提になってしまって、誰かを縛ってしまうかもしれないから。
Riseで生み出したものは人への優位性を示すためとか、上下をわからせるためには、できれば使わずにいたい。代わりに、その生み出したものを持ち寄って、誰かと仲良くなったり、共鳴できる人と出会いにいけたらいいなぁと思うのです。

今回の登壇も、そうしたRiseの実りの一つの形かもしれないよね。


ワークショップ

ワークショップ

プレゼン後、小さなワークショップをしました。
あなたのSankofaの卵はどんなの?」という問いで、それぞれに自分の卵を描いてもらいました。

Sankofaは、過去を取り戻して、卵として未来をくわえています。
私がSankofa切り絵を作った時は、卵の部分に真っ赤な紙を貼りました。
以前、自分のブランドカラーの赤色の理由として、過去の闇を通り抜けた炎の色のお話ししたことがありました。その赤色を、卵に写したのです。

他の人って、Sankofaの卵をどんな風に描くんだろう?

卵は、過去の記憶から形作られるのかもしれないし、未来なりたい姿を映すのかもしれない。卵だからって卵形でなくてもいいし、白くなくてもいいし、柄があってもいい。

で、描いてもらったものがこちらです。




みんな個性的...!

残念ながら、Wi-fiがよわいふぁいだったため、実際のワークショップ中は音声や画質がそこまで良くなかったのですが、後日で送られてきた動画で、すごく素敵な作品を確認できたのでよかったです。

アフリカの伝統デザインを組み込んでいたり、割れた卵を描いて新たな始まりとして表現したり、自分の可能性を色や形で表現していたり...
一人一人がいろんな卵を描き出していて、楽しかったです。


まとめ

今回、すごく素敵な機会をいただけて嬉しかったです。

今後もまた、研究や展示や授業の一環で一緒になにかできたらいいよね、というお話をしているので、この先の展開もワクワクです。